声をかけたのはサザエの方からだった。

「カツオ、もしよかったらカツオも一緒に、三人で暮らさない?」

「姉サン・・・デモ僕ノ事マダ許シテナイデショ?」

「それは・・・」

「ソレニ中島モイイノカイ?二人ッキリノ方ガイインジャナイカ?」

「中島君、カツオも一緒でいいわよね?」

「もちろんだよ磯野〜!」




サザエは聞くつもりでいた。どうしてカツオがあんな事をしたのか。

サザエはまた、カツオを信じていた。きっと何か理由があったに違いない。

自分の家族の死体の中、血まみれで不気味に微笑むカツオを見ても、

逃げ惑う子供を笑いながら皆殺しにするカツオを見ても、

どこかカツオを憎みきれずにいたのだ。

もう一度あの頃に戻ってくれるなら。

もう一度やり直せるなら。

カツオと暮らしてみてもいいと思ったのだ。














こうしてサザエ、カツオ、中島の三人の生活が始まった。

一見三人の生活は平和で、何も問題のないように見えた。

だがサザエと中島が仲良くするのを見つめていたカツオの目が

激しい怒りと冷たい殺意で二人に向けられていたのを

サザエは知るよしもなかった。



サザエはカツオが変わり始めてると思い込んでいた。

中島に夢中になるあまり、自分の幸せさのあまり半ば盲目になっていたのだ。


「ねえカツオ。タラちゃんは今どこにいるの?」


それとなしに聞いたこの一言が、

後の大惨事を招く事になろうとは、この時のサザエには想像もできなかった。



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