ある国の片隅に、とても仲のよい三人兄弟が住んでいました。

早くから父を亡くし、とても貧しい中で三人はたくましく暮らしていました。


末男は、とてもかしこく優しい二人の兄達が自慢の種でした。

末男はいつも兄達の後ろを追いかけ、兄達もそんな弟をとてもよくかわいがりました。



やがて時が経ち、長兄は国で最も受かる事が難しいとされる官職に就く事ができました。

母はとても喜びこれで貧しい暮らしともおさらばできると思いました。

次男もやはり兄の後を追い、その官職の試験に合格しました。

母は二人の息子を誇りに思い、

末男も二人の兄達をますます尊敬するようになりました。



やがて末男も成長し、兄達と同じ官職に就くため、試験を受ける事になりました。

しかし末男は上の二人と比べるとあまりかしこいとは言えませんでした。

その為末男は試験に落ちてしまいました。


母は受かる事が当たり前だと思っていた為、末男に辛くあたりました。

兄達は何も言わないものの、末男には自分が冷たい目で見られてるように感じました。


自分はなんて駄目な人間なんだ、とすっかり自暴自棄になった末男は

一人ベッドで泣いていました。するとどこからともなくかすかな声が聞こえてきました。


「何をそんなに悲しんでいるんだい?」


びっくりした末男は当たりを見まわしてみましたが、誰もいません。

気のせいかな?と思い

ふたたびベッドに顔をうずめました。


「何をそんなに悲しんでいるんだい?訳を教えてくれよ。」


今度ははっきりと聞き取れました。もう一度あたりをよく見まわしてみると

身の丈一寸ほどの小さな小人がこちらをじっと見つめていました。

おどろいた末男はおもわず訪ねました。


「君は誰だい?」


すると小人は愉快そうにこう答えました。


「僕が誰でもいいじゃないか。それより悲しんでる訳を教えておくれよ」


末男はこの際誰であろうと、自分の心内を聞いてほしかったので

あらいざらいを小人に話しました。

すると今まで末男を絞めつけてた胸の痛みが晴れていくのが分かりました。


小人は常に末男の側にい続け、末男もだんだん元気を取り戻してきました。

そして来年もがんばろうという気持ちになれました。


小人は末男を励まし続け末男も大変努力しました。

しかし二度目の試験にも落ちてしまいました。


末男は大変ショックをうけ、小人が何を言っても耳を貸しませんでした。

するとまたどこからともなく声が聞こえてきました。


「やい兄さん、何をそんなに悲しんでいるんだい?」


末男があたりを見まわすと、今度は違った小人がちょこんと座っていました。

末男は二人目の小人の、一人目とはまた違ったやんちゃで、

あっけらかんとした性格に元気づけられ、次第に傷も癒えてきました。

また、二人の小人が喧嘩した時などは末男が仲裁に入ったりもしました。

そして来年こそはという気持ちになれました。



しかし、とうとう三回目の試験にも落ちてしまいました。

末男は以前ほどはショックに感じませんでした。

母も末男には半ばあきらめかけているようでした。

兄達もそれぞれの仕事に追われ、末男とはだんだん会話さえしなくなっていきました。


末男が一人ぼーっとしてると、またどこからともなく声が聞こえてきました。


「そんなにぼーっとして何を考えてるのー」


三人目の小人は少し太っておっとりした、優しそうな小人でした。

末男は三人の小人のお話を聞いていると、楽しい気持ちになれました。

試験に落ちたことなどすっかり忘れてしまいました。



それから4回目、5回目と試験に落ち続け、その度に小人が増えていきました。

末男はもう受かる為でなく、新しい小人を手に入れる為だけに試験を受けていました。


一人部屋にこもり、小人達と会話する日々が続きました。

母や兄とすら、しゃべる事はほとんどありませんでした。


そして6回目、ついには7回目の試験にも落ちました。

末男は満足気に7人の小人を見つめこう言いました。


「次はどんな小人なのかな〜」


すると小人達は口を揃えてこう答えました。


「僕達はこれ以上増えないよ」




生きる目標を失った末男は舌を噛み切って自害してしまいました。

そしてどこへともなく7人の小人達は消えていきました。



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